【農家が教える】アスパラガスの害虫対策と、主な害虫8種

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【農家が教える】アスパラガスの害虫対策と、主な害虫8種

①アザミウマ類

主にネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ(温暖地)がいます。体長約1mmの細長い幼虫と体長1.5mmの羽のある成虫がいる。葉茎の上で幼虫が生活し、地表でさなぎになり羽化後、成虫は茎上で産卵する。

擬葉や若茎を食害して、白いカスリ状(紙やすりをかけたような)の食害痕を生じる。発生数が多い場合は若茎の伸長が止まって、茶色に腐敗する。

発生のピークは5月下旬から6月中旬、9月下旬頃にも発生する。地域によって誤差があるので地元のJAなどに確認してください。

一度ビニールハウスで発生してから、防除間隔を開けすぎると大量発生する傾向がある。予防対策としてビニールハウスの入口や通風孔などにネットを設置したり、周囲の背の高い草などを刈って置くと良い。アスパラガスの茎葉が繁茂すると、内部まで薬液が届きにくくなるため、立茎時、立茎後の防除は適時行うこと。

天敵にカブリダニやタイリクヒメハナカメムシがいる。天敵殺虫剤として販売されている。

アザミウマ類の対策ポイント

  • 非常に小さい虫なので、発見時には既に蔓延してることが多いので発見時なるべく早めに防除する。
  • マメ科、アブラナ科の草に好んで付くため、周囲にある場合は刈り取る。
  • 発生が止まるまで有効薬剤をローテーションで数回散布する。

②チョウ目害虫

主にハスモンヨトウ、シロイチモンジヨトウ、オオタバコガなどと典型的な青虫が見られる。

基本的に成虫が施設外から飛来して、植物上や支柱などの資材に卵を産み付ける。幼虫が若茎や擬葉を食害する。発生すると擬葉に幼虫が沢山くっ付いてるので分かり安い。ヨトウムシは日中には、地中に潜ってる場合もある。

ビニールハウス内に侵入されない工夫をすること。農薬の散布はもちろん、収穫中に見つけたらしっかり駆除することで個体数を減らす。天敵としては、ゴミムシ類やカメムシ類、ハチ類、カエル、鳥など。これらを用意するのは現実的ではない。

チョウ目害虫の対策ポイント

  • 体長1cmくらいの幼虫がまだ若齢期に有効薬剤を散布する。大きい幼虫には効果が薄い。
  • 収穫時などに主に黄色い卵塊、幼虫を発見したら、しっかりと駆除する。
  • 防虫ネットを設置して施設内に侵入を防ぐ。

③ハダニ類

主な加害種はカンザワハダニである。卵が0.1mm、幼虫が0.2mm、成虫が0.4~0.6mmと非常に小さいので、若茎を黒い色紙などの上で叩くと紙に落ちて見つけやすい。

食害痕がカスリ状なのでアザミウマ類と間違われる場合もある。高密度で発生すると擬葉に蜘蛛の巣のようなネットを形成する。擬葉が落ちたり、若茎に伸長が止まって変色するなどの被害がある。ダニの密度が飽和すると移動する傾向がある。

ハダニ類は25~28℃で活発になるので、発生ピークは7月以降秋の気温が低下するまでになる。真夏の30℃以上の気温では活性が低下する。ダニなので世代交代が早く、10日くらいで卵から成虫になる。

降水量が少ないタイミングで発生しやすい、また人に付着したり風に乗って飛来する。発生を発見次第、防除すること。肉食性のカブリダニ類が天敵になる。

ハダニ類の対策ポイント

  • ハダニ類は成茎などで越冬するので、収穫終了後の枯れた成茎を畑外に持ち出して処分する。
  • 畝面や通路を炎で焼いて、残渣や枯葉などを無くすようにする。
  • 発生時には有効薬剤を散布する。

④コナジラミ類

九州地方を中心に発生が確認されている。主な種はタバココナジラミ(バイオタイプQ)になる。このタイプは薬剤抵抗性が発達しているため、防除対策上、問題となっている。その他、タイプB、JpL(在来系統)、Nauruがいる。

幼虫時も成虫時も吸汁加害する。成虫は白色で無紋の翅を持ち、体は淡黄色、体長 は約1mm。蛹(幼虫)は全体に黄色っぽく、表面には毛がなくなめらか。やや平べったい形状をしている。

発生密度が高まると擬葉に甘露(排泄物)が付着してスス病の発生原因になる。スス病のため光合成が阻害されて減収する場合もある。

5月下旬から飛来するようになり、発生のピークは8月下旬から10月上旬である。対策としては、早期発見のために粘着剤シートの設置や農薬抵抗に対してのローテーションを行う。

タバココナジラミは、野外では、成虫は4~11月まで見られ、夏に発生が多い。低温に弱いため、降霜地帯では野外越冬できない。施設栽培では周年で発生する。

オンシツコナジラミは、寒さに比較的強いので、野外で越冬できる。冬から初夏の施設栽培で発生が多い。成虫は生長点や若い新芽を好み、葉裏に産卵する。

コナジラミ類の対策ポイント

  • 発見時には高密度になっていることが多いので、なるべく早めに防除する。
  • 施設栽培では越冬している場合があるので、収穫終了後の枯れた成茎を畑外に持ち出して処分する。
  • 畝面や通路を炎で焼いて、残渣や枯葉などを無くすようにする。

⑤アブラムシ類

野外では4月下旬から飛来して吸汁加害する。だいたいの農薬が効くので、定期的に防除していれば問題はない。天敵はテントウムシ。主にモモアカアブラムシは、体色は黄緑色、緑色、赤褐色と変化に富む。角状管、尾片が体と同色で、角状管の先端は暗色。有翅のものは腹背中央に暗色の大きい斑紋がある。無翅には斑紋がない。

アブラムシ類の対策ポイント

  • 住処となる周辺の雑草の刈り取り。
  • 有効薬剤の散布。
  • クローバー類を周囲に植えて、天敵のテントウムシを誘因。

テントウムシは、アブラムシ類、アザミウマ類、ジュウシホシクビナガハムシの天敵です。

⑥ナメクジ類

降雨が続く梅雨時期に発生し、若茎を食害する。周囲の雑草を食べたり住処にするので、アスパラガスの畝は除草管理をしっかりして、周囲の雑草はなるべく刈る。キク科の植物を好むのでオトリとして、周囲にマリーゴールドを植えることも有益です。

直接散布する農薬では、ICボルドー66Dが有効です。地表に撒く農薬では、作物登録がなく施設・圃場登録しかない。とくに初めて使用する場合は、病害虫防除所等関係機関の指導を受けることが望ましい。

ナメクジ類の対策ポイント

  • 収穫時に発見したら、駆除する。
  • 食害対策としては、ボルドー液の散布。
  • 非常に気になる場合は、ビールやオレンジジュース、米ぬかなどで誘因トラップを作って駆除する。

⑦コガネムシ類、カメムシ類

マメコガネの成虫は主に擬葉を食害し、幼虫は地中で根を食害する。カメムシ類は若茎などを吸汁加害する。対策としては、周囲の雑草を刈る。基本的に飛行能力が高いので、防除で対策することは難しい。

5月以降は常に畑で見かけるが、基本的に大量発生することはまずない。

◆コガネムシ類、カメムシ類の対策ポイント

  • 有効薬剤の散布。
  • 発見時に水を入れたペットボトルなどの容器に落として駆除する。
  • 他の害虫と比較すると被害は少ない。

⑧ジュウシホシクビナガハムシ

ジュウシホシクビナガハムシについては下記の記事を参照してください。

ページを最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。ご参考になれば幸いです。

参考サイト:あいち病害虫情報トップページ – 愛知県 (pref.aichi.jp)

参考サイト:農作物病害虫データベース | 長野県農業関係試験場 (agries-nagano.jp)

参考文献:『アスパラガス大辞典』、農文協編、発行:農山漁村文化協会、2021年1月25日

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