アスパラガス農家のアスパラガスの品種比較(甲信越地方)
こんにちは、新潟県佐渡市でアスパラガスを栽培している農家です。
この比較はあくまでも私の体感の話のため、信頼性に関しては保証できません。その点は何卒ご了承ください。
アスパラガスの栽培経験はだいたい5年になります。畑は20アールを管理しています。
私が所属しているアスパラガス組合では、参加メンバーの畑を巡回訪問して、生育管理を見ています。
組合内で栽培している品種は、「ウェルカム」、「ウェルカムAT」、「スーパーウェルカム」、「ずっとデルチェ」、「りゅうりょく」などがあります。
実際に栽培している人から、話を聞いたり、書籍から引用した内容をまとめています。
アスパラガスの品種生態と特性と体感
ウェルカム
品種比較する場合、標準となる品種。アメリカの西海岸で育成された。
日本の各地で栽培されているポピュラーな品種。
種が安価なので、アスパラガスの入門的な品種です。
- グループ:第2
- 雌雄:混合
- 若茎の色:淡緑色
- 若茎先端の締まり:優れる
- 太さ:普通
- はかまの色:淡紫色
私の感想:初めての栽培では、アスパラガスは病気に非常にかかりやすいと感じました。アスパラガス組合でも、栽培を始めた人によってはこまめな管理ができなくて、数年で廃園になることがあります。アスパラガスは果樹や水稲と比較すると労働時間が多く必要になります。アスパラガス全体に言えることですが、最近は高温や大雨などの天候不順により、年間の収量が減っている傾向があります。
ウェルカムAT
オランダで開発された全雄の品種。ウェルカムよりも1年を通して収量が多い。
太さもウェルカムよりも太いものが多く採れる。
高温に非常に敏感のため、ビニールハウスで栽培する場合は、温度調節のための換気方法が必要になる。
露地栽培の場合でも、高温対策と水分対策が必要で夏場の潅水が必要になる。
潅水できない場合は規格率が下がりやすい。
- グループ:第3
- 雌雄:全雄(ウェルカムとウェルカムATの違いは、ATは種を付けないことです。)
- 若茎の色:濃緑色
- 若茎先端の締まり:普通
- 太さ:太い
- はかまの色:濃紫色
私の感想:ビニールハウスを全開にしても、穂先の開き早い場合が多々あるので、高温対策が必要です。露地栽培でも、穂先が開きやすくビニールハウスに隣接した畝も規格率が下がります。親指以上の太さの立茎を毎年していると、非常に太い3L(1本で65g)以上のものが生えてくるようになる。そのため、立茎するときの太さを確実にチェックすること。
スーパーウェルカム
ウェルカムと比較して、穂先の締まりがよく、太い若茎が多く収穫できる。
病気の耐性に関しては、ウェルカムと大差はない。
植え替え時のアレロパシー活性が強く、連作障害に強い。
- グループ:第2
- 雌雄:混合
- 若茎の色:淡緑色
- 若茎先端の締まり:優れる
- 太さ:やや太い
- はかまの色:淡紫色
私の感想:穂先の締まりが良い。年間の収量がウェルカムに比べてやや多い。ほかの点では、だいたいウェルカムと同じです。
りゅうりょく
全雄系の一代交配種。草勢が強く、特に生育の揃いがよく、育てやすい品種。
アントシアンレスなので紫色が発色せず、きれいな緑色の太いアスパラガスが収穫できる。
- グループ:第3
- 雌雄:全雄(種を付けません。)
- 若茎の色:淡緑色
- 若茎先端の締まり:普通
- 太さ:太い
- はかまの色:緑色
私の感想:若茎が発生する勢いがあるので、最初は丁寧に茎が密集しないように間引きます。茎が密集した中心部が病気になりやすいです。春どりの色は、ウェルカムと比べると淡い緑色が顕著です。夏どりの場合は擬葉の影になり、ウェルカムも色が薄くなるので、りゅうりょくの淡い緑色も目立たないです。アントシアニンフリーのため、紫色の点が生じる雨傷が目立たないのが利点。病気には弱い印象。
ずっとデルチェ
メリーワシントン500W(雌系)とガインリム(雄系)を掛け合わして作られた品種。
春どりでは、太いものが多く多収である。夏季は潅水することで増収し、安定した収量が得られる。
開発段階で、長期どり作型に最適化した品種である。
ウェルカムがアメリカ西海岸の気候に適した品種に対して、ずっとデルチェはオランダの気候(日本の寒冷地と同じ気候)に適した品種。
- グループ:第3
- 雌雄:混合
- 若茎の色:やや濃緑色
- 若茎先端の締まり:普通
- 太さ:太い
- はかまの色:淡紫色
私の感想:露地栽培において春どりの穂先の締まりは、非常に良い。また春の1日の最高気温が15度程度の場合、伸びがウェルカムと比較して遅い。夏場の穂先の開きは、ウェルカムと同じぐらいに感じる。斑点病に強いとされているが、茎枯病に対してもやや耐性があるように感じる。ウェルカムより、病気に強いと感じた。発病しないわけではなく、発病後も防除をすれば、ある程度は進行を抑えられた。夏場の収量は潅水することで多収となるが、若い2,3年目の株では、総量がウェルカムより少ないので、4年目以降が本番。
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